色彩は「もう一つの心の言葉」です。 色は私たちの感情や記憶と深くむすびつきながら日々を豊かに彩り、心身に様々な作用を及ぼしています。色を使った表現を通して心を元気にしたり自分らしさを育てたりするアートセラピーを社会に活かしていきたいと思っています。

メッセージカード

この時期は、卒園や入学などであわただしい日々をおくっている親御さんも多いのではないでしょうか。
今春一年生になる6才の女の子も「先生へのメッセージカード」という“宿題”をアトリエにもってきました。

お世話になった幼稚園の先生ふたりに、絵や写真などを添えたメッセージカードを書かねばなりません。絵の大好きな彼女は、迷わず色鉛筆を取ると、はがき大のカードの表に先生の顔を描きました。しっかりしたタッチで、周りを蝶や星の形のスパンコールで飾って一工夫。

難しかったのは裏面の言葉のメッセージです。
「先生ありがとう」だけじゃなくて、もう少し何か書きたいと頭をなやませます。
私も、先生との思い出や先生の好きなところなどを聞き出そうとするのですが、怖かったり叱られたりした話も当然でてきます。

結局まあよくある文章に落ち着きましたが、こんなに小さいのにホンネとタテマエの間で揺れ動き、でもきちんと伝えたいと努力して・・・。子どもって偉いなあと感心しました。


2枚のカードを1時間かけて完成させると
「やったー、これで好きなことができるねー」と元気モード全開に。
それが、この作品です。


粘土をぐいぐい押しつけて、力強い波と太陽を表現し、カラフルな魚を泳がせました。
きちんとカード完成させた後、一気に心が開放された勢いある作品です。  


  • アトリエにも春が来た!

    今日はちょっと曇っていますが、昨日はいいお天気でした。
    2月も梅のほころぶ頃となりました。

    昨日、アトリエで子どもたちが思いのままに描いた絵にも春が来ました。

    5歳女の子。ちょうちょとハートとお花。


    5歳男の子。角の生えた青虫。

    体で感じていることを自然に表現してくれるのが子どもの絵のおもしろいところです。
    冬の間は、「絵具で絵を描かない?」とさそっても「やだあ」という答えしか返ってきませんでした。
    寒い時というのはあんまり水もさわりたくありませんよね。
    暖かさとともに心や体も動き出したのか、開放感のある水彩画になりました。


    こちらはぐっとタッチもしっかりした5年生女の子の作品。実にユニークなお雛様。
    元気なお日さまみたい。
    お迎えにみえたお父さんが「この子らしいです」と楽しそうに見ておられました。

    アトリエで色彩とともに早目の春を感じています。  


  • 仙台、名取、石巻

    さて、今日も午後からアトリエです。
    その前にちょっと今週のご報告を。

    14日(火)仙台に行ってきました。震災後東日本クレヨンネットの活動の一環として、仮設住宅や保育園で絵を通した心のケアの活動を続けてきた友人を訪ね、お手伝いをさせてもらうためです。

    震災から11か月たち、今頃ボランティアに入るというのは、いかにも遅きに失する感はいなめません。それでも一度いきたいと思っていたことがやっと叶いました。

    この日は友人を含めた仙台チームの方と一緒に名取市の増田保育園にいきました。そして翌日15日は同じ名取市の手倉田保育園へ。ここは津波の被害ですべてが流された閖上(ゆりあげ)保育園から移ってきた園児も8名いる保育園です。

    保育園の一日のスケジュールのなかでのわずか1時間ほどのお絵描き・工作の時間ですが、
    たくさんの画材や道具を車につみこんでの移動や準備などスタッフの仕事は大変です。

    でも、保育園も園児たちもとても楽しみにしてくれていて、子どもたちの笑顔にはげまされて続けてこられたとスタッフのみなさんが語ってくれました。
    それは、私がアトリエをつづけてこられた気持と同じです。


    みんなすごく楽しそうにしていましたが、特に印象にのこったのが男の子たち。行動も表現も力強い子が多いなと思いました。(やんちゃといってもいいのですが)。
    紙粘土を丸めて色をぬり、それを色水のなかに入れて遊んだり、木で作った家には「風にまけない家」という題をつけたり、なにかエネルギーが強いのです。

    月一回のお絵描き・工作ですが、活動当初に比べみんなずっと落ち着いてしっかり自分のやりたいことに取り組めるようになったとのこと。絵を通してみえてくる子どもたちの心に寄りそってきたスタッフのお話もたくさん聞いてきました。

    保育園側も園児たちも活動の継続を強く望んでいるそうです。けれど、仕事や生活をかかえながら、また自らも被災する中で活動を続けてきたスタッフの事情もあり、この4月以降については難しいかもしれないということです。

    今後[展覧会」の予定もあるとか。私も自分にできることをお手伝いしていくつもりです。



    15日、名取市での活動を終えたあと、足をのばして石巻へいきました。
    なんというか・・・、この国の1人として被災地を見ておきたいという気持がありました。

    「日和山公園は見晴らしがいいよ、被災地をどうかしっかり見てきてね」と言う友人にお礼をつげて石巻へ。彼女自身、この震災で石巻の親族の方を失っています。

    仙石線がまだ一部復旧していないので、仙台から高速バスで1時間半。石巻駅前の観光センターでタクシーを呼んでもらいました。

    石巻には「被災地めぐりコース」を立ち上げたタクシー会社がいくつかあります。
    私は「仙台にボランティアにきて、こちらはただ見ておきたくてきただけなのですが・・・」
    と言うと、佐藤さんと言う運転手さんが「わざわざ石巻にありがとう。どうぞどうぞ」と笑顔で応じてくださいました。

    私は1時間コースをお願いしました。旧北上川河口付近を中心に、街中や日和山公園、そして壊滅的な被害を受けた沿岸部、小学校、仮設住宅など案内してくれました。行く先々で運転手の佐藤さんも車をおり、一緒に歩きながら、町の歴史や産業、被災状況など、穏やかさをたたえた口調で説明してくれるのです。それはもう言葉にならない光景の中で。
    瓦礫はすでに片付いているとはいえ、一瞬にして奪われた日常がここにあったと思うと胸のつまる思いでした。


    「案内した人に名前を書いてもらってるので・・・」と差し出された小さなノートに記名してタクシーをおりました。

    「とにかく1人でも多くの人に石巻に来てほしい。そして、忘れないでほしい。復興がすすんだらまたぜひきてくださいね。」と
    最後まで笑顔の佐藤さん、ありがとうございました。

    都市に生活するものは、これからは「忘却との闘い」です。
    仙台、石巻行けてよかった。
    また行きたいと思っています。




      


  • Posted by turu at 13:19Comments(3)出かけました

    5歳だって大人っぽい色

    今日もアトリエの作品を紹介します。これはは5歳の男の子の作品。
    3回くらい通ったなかで時間をかけてつくりました。


    タイトルは「街」です。
    青い海の横に、道路とトンネルと車、それから信号のついた歩道橋があります。
    人は紙粘土を型抜きで抜いて作ってあります。

    ひとつひとつのイメージがしっかりあるだけに、何度も作りなおして
    立体にするのにすごくがんばっていました。

    作者の口癖は「できない」「できない」「ああ、できない」。
    ちいさな哲学者のように「ああ、できない」をつぶやくのです。


    でも、この歩道橋も信号もよく観察していることがわかります。
    絵具、厚紙、紙粘土といろんな素材をつかって
    自分のイメージに近づけようとする力や意欲もなかなかのものです。

    そしてダークな大人びた色使い。
    ダークな色や青い色は感情的には抑制がきいています。
    「ああ、できない」のつぶやきは、慎重にイメージどおりに良く考えてつくりたいという内面の声でしょう。

    5歳でも、その色合いから大人びた感情を感じさせる作品になりました。

    そして、すっごく良くできてると思うよ。  


  • 毛糸の作品で心もほっこり

    アトリエの、3年生の女の子の作品を紹介します。
    この日は何をしようかと、さんざん考えて迷って、でも決められなくて・・・というスタート。

    そんな時は単純作業的なものがおすすめです。
    同じことの繰り返しというのが、心に作用すると不思議と落ち着き、集中力がでてくると言われています。
    例えば細かいタイル状のものを作って貼るとか、ひたすらビーズをつなぐとかです。
    もちろんやってて楽しくなければ逆効果ですが。

    そこで、段ボールに毛糸をぐるぐる巻いて、それを縦糸にして横糸を通すという「簡単織り」をやってみました。

    縦糸は淵をちょっと高く貼り足した段ボールにぐるぐる1センチ間隔で巻きつけ裏でセロテープでとめるだけ。
    あとは好きな色の毛糸を互い違いにとおしていくだけです。通しやすいよう毛糸の先はヘアピンにとおします。

          
    30分経過。
    だいぶ楽しくなってきました。

          
    ここまでで約一時間。
    「時間まだある?」
    「あるある、心配しないでゆっくりやって」


    段ボールから切りはなして糸端を結び、ふたつに折って毛糸で巻きとめてかわいい袋のできあがり。
          

    2時間しっかり集中。ちょっと疲れた様子だけど「すごく楽しかった」の声が聞けてよかった。
    暖色があたたかさを伝える、冬にぴったりの作品です。