色彩は「もう一つの心の言葉」です。 色は私たちの感情や記憶と深くむすびつきながら日々を豊かに彩り、心身に様々な作用を及ぼしています。色を使った表現を通して心を元気にしたり自分らしさを育てたりするアートセラピーを社会に活かしていきたいと思っています。

写し絵のいいところ

子どもたちはイラストやアニメのキャラクターをはじめ、動物や乗り物などいろんなものを写し絵にして描くのが大好きです。

幼児から子どもに成長して行く一年生くらいからでしょうか、乗り物などの形や構造に興味を持ち始め、実物のようなきちんとした形を求め始めます。
動物や植物の場合もそれは同じで、かわいいネコちゃんウサちゃんではなく、耳は足は尻っぽはどうなっているの?という興味が育ってきます。

そういう時って、形そのものに興味があるせいか、線画だけでなぜか色を塗ってくれないことが多いです。
「色も塗ろうよ」とお願いしても「ヤダっ!」でおしまい。
線で形を明確にする論理的で左脳的な仕事には、情緒や感情の表現である色彩はむしろ邪魔なのかもしれません。




でもこれも、アニメや映画のキャラクターの写し絵となると、形プラス色もしっかり意識して描いてくれます。
物語のなかを生きるキャラクターたちには、強い個性や魅力的な表情、それに役割など、感動を誘い自己を投影して心を寄せたくなる要素がたくさんあります。だから形だけでなく色も必要なのですね。






そんな子どもたちが使う便利な道具がトレーサーです。
昔はライトテーブルとか呼んでた、上面がすりガラスになった木の平たい箱に蛍光灯が入ったようなもので、手作りしたりもしてました。

今はそんなレトロなライトテーブルは見かけなくなり(売ってない)、LEDライトの入った薄いスマートな形で、値段も高価になりました。
スイッチをいれるとライトが光るので、上に素材の絵と紙をかさねて透かして写していきます。


この写し取るという作業はなぜかすごく集中してしまうようで、どんなおしゃべりな子も静かになります。
「あれ、なんか静かになったなあ」と思うと「ああ、○○ちゃんトレーサー使ってるのね」という具合です。

大人の感覚からすると写すのはどっこかラクをしている、絵はちゃんと見て描くのが大事という人もいるでしょう。
アトリエの親御さんからも、写し絵ばかりしていて絵をお休みしているのでは、と心配されることもあります。

でも黙って写し絵をしている時の子どもたちは、集中力もさることながら、形に対する興味や知的好奇心がものすごく伸びているのだと思います。
きちんと形を写すことで、自分の思い込みや描き方のくせが一度きれいにリセットされるだけでなく、形に対する苦手意識がなくなるせいか、その後の、自由表現や観察画も格段に上達していきます。

だからもし、子どもが何かに興味をもって写しだしたら、マンガばっかり、同じのばっかりでも、どんどんさせて上げてほしいと思います。
子どもたちのやわらかな脳は刺激をうけて楽しくて、どんどん力をつけているのですから。

大人の人も何か描いてみたいなと思ったら、まずは写し絵からというのもいいですよ。
好きな画家や写真などを写しとって色を塗ってみてください。
案外心のバリアとれて、楽しくなること請け合いです。  


  • 初めてのジブリ美術館


    早くも暦は2月になってしまいました。先月末は、「調布市文化会館たづくり」や「三鷹市芸術文化センター」に出かけ、この時期開かれている小学校図画工作展を見てきました。

    アトリエからも何人か選ばれているので、子どもたちからも「センセイ、見て来てね!」と言われていました。

    時間をかけてていねいに作られた作品はどれも見ごたえがありました。ただ、材料やプロセスも同じせいか、どの学校も同じような感じの印象になってしまうのは否めません。でもデザイン的なテーマや墨をつかった作品など、いろんなヒントが得られて楽しかったです。


    そしてもうひとつ、「三鷹の森ジブリ美術館」に初めて行きました。長く三鷹に住んでるのに、近いからいつでも行けると思っていたら、ようやく今頃になってしまいました。

    チケットは三鷹駅前の観光協会で。三鷹市民枠があるので、その日に当日分のチケットをゲット。
    以前はこの市民枠で遠方から来る親族や友人のチケットを買ってあげたりしていました。でも、最近は購入者以外の人が使うことや、転売などの行為を規制するため、チケットのすべてに購入者の名前が印字されるようになりました。買った本人が、ちゃんと行ってね!ってことなのですね。あんまり考えないで買ってたなあ。

    でもまあ、とにかくチケットを手にうきうきとジブリへ。門のところに係の人が二人立っており、チケット提示を求められました。それから「お名前をお聞かせください」とチケットと名前の一致を確認。無線のインカムで「三鷹市民枠のお客様ご案内です」とつぶやいて、それでやっと建物入り口まで案内してくれました。

    おとぎの国のような館内は、そこにいるだけで楽しく興味深い展示がたくさんありました。中国人の団体さんや、小学生、幼稚園の子どもたちもいっぱいいてすごくにぎやか。(ちょっとやかましい)

    それでもゆっくり見て、出口ちかくまで来るころには、私の心は不思議ななつかしさと、むしろ地味な味わいに包まれていました。
    子どもたちが喜びそうなアニメ上映や動く展示もあったけど、やっぱり制作過程を再現した部屋やコーナーからは、気が遠くなるような時間の積み重ねが伝わってきます。ストーリー・ボードというおびただしい数のスケッチや、ストーリーにそったラフには圧倒されます。写真や資料の数々や、短くなって持てなくなった鉛筆の山、1000色以上のセル画用の絵の具の瓶、どれもこれもアニメーションをつくる膨大な手仕事を物語っていました。
    そして美しい背景画。美術と呼ばれている背景の絵は、A4やB4くらいの大きさに、ものすごく壮大な山々や美しい風景が描かれており、意外と小さいことに驚きました。そして「削用」や「彩色筆」といった日本画で使うような和筆がずらりと並んでいます。「ああ、こうやってあの美しい背景が描かれたのか」とただただ長~い道のりに感動し、色の美しさにひたるような気持ちになりました。

    もちろん今はコンピュータグラフィックが主流なので、セル画もその絵具も使うことはありません。ほんとうに他の世界同様アニメも進化し続けているのだと思いました。

    あんまり人がいっぱいいたので、ショップに寄るのを忘れて出てしまいました(残念!)。次に行く時はショップもゆっくり見たいと思います。



      


  • Posted by turu at 11:58Comments(2)出かけました